「挑戦する」というのは良いことに見えるが・・・
新しいことに挑戦する、新しく何かを始める、
というのは非常に良い響きです。
何か新しい可能性が増えそうな気がしますし、「何かを始めたこと」について周囲に公言すれば応援してくれる人も現れます。
新しい挑戦、何かを始めることというのは、ポジティブ感で溢れているような印象があります。むしろそれしかないかも知れません。
しかし、その「挑戦」や「新しく始める何か」の実体やそれに至った背景などをゆっくり観察してみると、実はそれほどポジティブでもない、何の可能性も広がっていない、ただ立ち位置が横にスライドしただけという例も数多く存在します。
実は多くの「挑戦」はそれしかないかも知れません。
例えば、この数年で明らかに増えたのがフリーランスのトレーナーやインストラクターたちが自分のトレーニングジムやスタジオを開業することです。SNSがある現在では宣伝も兼ねて、「この度自分のジムをオープンしました!!」などと積極的に情報発信するトレーナーが多く、それらの投稿にはもちろん「いいね」が数多く付くことになります。
ただ、その開業がポジティブなものであるかどうかは疑問です。
純粋に自分の夢をかなえるため、収入アップ、仕事の幅を増やすための開業であるならまだしも、現在起こっている開業の実体は明らかに新型コロナウイルスによる世の中の変化によって収入を減らした、または仕事を失ったトレーナー達が「もうそこしか道が無い」ということで開業しているパターンです。
パーソナルトレーニングという言葉が世間的に定着して少なくとも10年は経過していますが、当然10年前から活動しているパーソナルトレーナーたちはその分年齢を重ねており、何かコネや繋がりが無いことには別の仕事に就くことが難しくなっています。できないとは言えませんし、仕事が無いわけではないですが、選べるような身分ではないことは確かです。
しかし、年齢を重ねた分だけ収入を増やしていかなければ生活ができません。ずっと一人で生活していくならまだしも、コロナ前の景気良く稼げていた時期に家族を持ったということならそれなりに稼ぎが無いとやっていけないのは明白です。
年齢が上がっていく、家族が増える・その他支出が増える
一方でコロナの影響により
収入が下がるor現状維持or増える見込みがない
ということになったのが多くのフィットネス業界人、それも自由な働き方を謳歌していたフリーランスのトレーナー・インストラクターたちです。
フリーランスは稼げていれば立派な「職業」ですが、ひとたびその状況が変って稼げていないということになれば立派な「無職」であり、「まともな職歴もないまま年齢だけ重ねてしまったフリーター」ということになります。
繰り返しになりますが、この状態では余程のコネやツテや繋がりが無ければ正規雇用で就職できる可能性は生じないでしょう。
結果として自分のジムやトレーニングスタジオを開業するしかないということになっているのです。